永住資格が取り消しになる場合【2024年入管法改正】

2024年(令和6年)6月14日、日本の国会において「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律」が成立し、同月21日に公布されました。この法律改正には、永住者の在留資格に関する重要な変更点が含まれています。
このページでは、今回の法改正によって永住資格の取り扱いがどのように変わるのか、特に注意すべき点について解説します。

永住許可をとった後の、永住者に関するお話しになります
なぜ永住許可制度が見直されたのか?
永住者は、日本社会の構成員として、税金や社会保険料の支払いといった公的な義務をきちんと果たすことが期待されています。しかし、一部で永住許可を得た後に、これらの義務を果たさないケースが見られました。
永住者は在留期間の更新手続きがないため、こうした状況を放置すると、義務を誠実に果たしている他の多くの永住者や地域住民との間に不公平感が生じるおそれがあります。



必要なルールを守っている永住者は、心配いりません。
今回の改正は、このような状況を踏まえ、永住許可後も日本社会のルールを守らない一部の悪質なケースに対して、適切な管理を行うことを目的としています。永住許可制度の趣旨に沿って、適正化を図るためのものです。
【重要】改正法で新たに追加された永住資格の取消事由
今回の法改正により、以下のケースが新たに永住資格の取消事由として追加されました。これは、悪質なケースを対象とするものであり、大多数の誠実に生活している永住者を対象とするものではありません。
故意の公租公課(税金・社会保険料など)の不払い
内容
所得税、住民税、年金、健康保険料などの「公租公課」について、支払う能力があるにも関わらず、意図的に(わざと)支払わない場合。
対象外の例
病気や失業など、本人に責任があるとは言えないやむを得ない理由で支払えない場合は、取り消しの対象として想定されていません。
注意点
もし滞納し、後から差し押さえなどで支払いが完了したとしても、それだけで「取り消しの対象にならない」とは限りません。ただし、支払いの経緯やその後の対応状況などは、取り消しを判断する際に考慮されます。
特定の重大な刑罰法令違反による拘禁刑(懲役・禁錮)
内容
刑法の窃盗、詐欺、恐喝、殺人などの罪や、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)など、特定の重大な犯罪(故意犯)を犯し、「拘禁刑」(懲役や禁錮)に処せられた場合。
対象外の例
- 過失(うっかり)による交通事故で人を死傷させてしまった場合(過失運転致死傷罪)。
- スピード違反などの道路交通法違反(罰金刑の場合も含む)。
- 罰金刑に処せられた場合。
入管法上の特定の義務違反(悪質なケース)
内容
入管法で定められた永住者が守るべき義務(罰則があり、退去強制の理由とはされていないもの)について、正当な理由なく、わざと守らない悪質な場合。
対象外の例
うっかり在留カードを携帯し忘れた、うっかり在留カードの更新申請を忘れた、といった場合は、基本的に対象となりません。
取り消し事由に該当したらどうなる?(改正法での扱い)
新たな取消事由に該当した場合でも、必ずしもすぐに永住資格が取り消され、日本から出国しなければならないわけではありません。
多くは他の在留資格へ変更
- 原則として、直ちに国外退去させるのではなく、法務大臣がその人の状況を見て、「定住者」など他の適切な在留資格に変更することが想定されています。
- ただし、「今後も公租公課を支払う意思がないことが明らか」「犯罪傾向が進んでいる」など、引き続き日本に在留することが適当でないと判断される特別な場合には、永住資格が取り消されることもあります。
家族への影響は?
- 取り消しや変更の対象となるのは、基本的に理由に該当した本人だけです。
- 家族(配偶者やお子さん)が永住者である場合、その資格には影響ありません。
- ただし、配偶者の在留資格が「永住者の配偶者等」の場合は、本人の資格変更に伴い、「定住者」などへ変更が必要になる可能性があります。
再び永住者を目指せる?
もし「定住者」などに在留資格が変更された場合でも、その後、公的な義務をきちんと果たすなど、永住許可の要件を満たせば、改めて永住許可を申請し、許可を受けることは可能です。
従来の永住資格取消事由・退去強制事由も引き続き適用されます
今回の改正で新たな取消事由が追加されましたが、従来からある以下のルールも引き続き適用されます。
- 永住資格の取消事由:
- 嘘の申請書類を提出するなど、不正な手段で永住許可を受けた場合
- 引っ越したのに新しい住所を届け出なかったり、嘘の住所を届け出たりした場合
- 退去強制事由(永住者でも対象):
- 日本または外国の法律に違反し、1年を超える実刑(懲役・禁錮)判決を受けた場合
- 薬物関連の犯罪で有罪判決を受けた場合 など
手続き、配慮、相談について
取り消し等の判断プロセス
- 永住資格の取り消しや変更を検討する場合、入国管理庁は事実関係を調査し、対象となる本人(または代理人)から意見を聞く機会を設けます。
- 最終的な判断は、法務大臣が、個別の事情(これまでの納税状況、現在の生活状況、日本への定着度など)を十分に考慮し、慎重に行います。特に、長年日本で生活している方などの状況には十分配慮することとされています(改正法の附則第25条)。
不服申し立て
永住資格の取り消しや他の在留資格への変更という決定に納得がいかない場合は、国を相手に裁判(取消訴訟など)を起こすことができます。
通報制度について
- 改正法により、役所の職員などが職務上、永住資格の取消事由に該当すると思われる外国人を知った場合、入管庁に通報 できる ことになりました(通報は義務ではありません)。
- ただし、単に税金の支払い相談などで役所に行っただけで通報されることは想定されていません。どのようなケースが通報の対象となり得るかについては、今後ガイドラインが示される予定です。
不安な場合の相談先
- 税金や社会保険料の支払いで困っている場合は、まず関係する役所の窓口に相談しましょう。
- ご自身の在留資格について心配な点があれば、お近くの地方出入国在留管理局や外国人在留支援センター(FRESC)などに相談することができます。
まとめ:改正法のポイントと今後の注意点
2024年の入管法改正により、永住資格の取消事由に、①故意の公租公課不払い、②特定の重大犯罪による拘禁刑、③悪質な入管法上の義務違反が追加されました。
これは一部の悪質なケースを対象とするものですが、永住者の皆さんは、改めて日本社会のルール、特に税金・社会保険料の支払い義務や、入管法上の届出義務などを守ることの重要性を認識し、適切に対応していく必要があります。


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